下水道と同程度の汚水処理性能を持つ合併処理淨化槽の構造は建築基準法で定められており、正しい使い方と適正な管理を行えば本来の機能を十分に発揮する事ができます。
しかし、使い方を誤ったり、維持管理を適切に行わないと、放流水の水質が悪化したり、悪臭が発生してしまうことになり、逆に生活環境を悪くする原因となってしまいます。
「浄化槽法」とこれに基づく各省令等で詳細に規程されている事柄のうち「使う側」の皆さんに知っていてほしい義務はつぎのようなことです。
1) 下水道による場合を除き、浄化槽で処理した後でなければ、し尿を公共用水域に放流してはならないこと。
2) 浄化槽を使用する人は「浄化槽の使用に関する基準」(下の1〜8)を守らなければならないこと。
1,し尿を洗い流す水の量は適正量とする。
2,殺虫剤・洗剤・防虫剤・油脂類・紙おむつ・衛生用品等で浄化槽の正常な機能を妨げるものは流入させない。
3,単独浄化槽は雑排水を流入させない。
4,合併処理浄化槽では、工場廃水・雨水その他の特殊な排水を流入させない。
5,電気設備のある浄化槽の電源を切らない。
6,浄化槽の上部、周辺に保守点検や清掃の邪魔になる構造物を作らない。
7,浄化槽の上に浄化槽の機能を妨げるような荷重をかけない。
8,通気口をふさがない。
3) 浄化槽法では、浄化槽の所有者などを「維持管理者」と定め、次のような義務を課していること(戸建て住宅の場合、一般には住民の方が「浄化槽管理者」になります。)
1,浄化槽の保守点検と清掃を、毎年、法律で定められた回数を行い、その記録を3年間保存しなければならない。ただし、保守点検や清掃を資格のある業者に委託することができる。
2,指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない。これには、浄化槽設置後一定期間に行う検査と(第7条検査)と毎年行う検査の2種類の検査がある。
なお、これら浄化槽の規定に違反すると処罰されることがあります。
浄化槽管理者に関係する違反行為とその罰則は次のとおりです。
1) 保守点検や清掃が定められた基準に従っていないとして都道府県知事が、改善命令や使用停止を命じた場合、この命令に違反すると処罰される。
2) 無届か嘘の届出により浄化槽を設置すると処罰される。
3) 届け出た浄化槽の設置計画が不適正であると認められ、出された変更命令または、廃止命令に違反すると処罰される。
4) 行政庁から浄化槽の保守点検や清掃等に関して報告を求められたのに報告しなかったり、嘘の報告をすると処罰される。
5) 行政庁の立ち入り検査を拒んだり、妨げたり、質問に答えなかったりまた、嘘の答えをした場合処罰される。
合併処理淨化槽のマンホールやブロワーの上には、物置などを置かないでください。特に日頃から点検や検査・清掃作業に支障がないように十分注意してください。
臭気の原因として考えられるのは、
1,ブロワーの異常による浄化槽機能低下
2,浄化槽の清掃不足
3,排気設備の不良
4,マンホール蓋の密閉が不十分
などがあります。
これらへの対処は、専門知識がなければできないものもありますので、委託している保守点検業者に連絡して、適正な措置をとるようにしてください。
トイレの洗剤として市販されているものにはおおよそ塩素系・酸性・中性の3タイプがあり、浄化槽向きであるものは、そのことを表示しています。
しかし、洗浄剤は、使用する量によって、浄化槽内の微生物の働きを弱めひいては浄化槽機能の著しい低下を引き起こすことがあります。できれば、トイレの清掃は水やぬるま湯を使い、便器の黄ばみ等を取るには消毒用アルコールをトイレットペーパに浸み込ませて拭き取るようにしましょう。
なお、洗浄剤を使用する場合は、浄化槽に対応しているタイプのものを選び、必ず適量の使用を守ってください。
市販の入浴剤を適量守って使用している限りは、心配する事はありません。
ただし、多量に入れると浄化槽内の水に色がつき、水質検査のときなどに確認しにくくなりますので、注意してください。
なお、硫黄化合物の含まれている入浴剤の使用は避けてください。
浄化槽の電源は絶対に切らないで下さい。これを切ると、浄化槽内の好気性微生物に必要な空気を送る装置であるブロワーが止まってしまい、微生物の働きを弱めたり死滅させたりして、合併浄化槽の機能を停止させることにもなります。
また、何かの理由で1年以上家を留守にするような場合には、電源を切り、清掃をしてから水を張っておくようにします。この場合は、浄化槽保守点検業者及び清掃業者に相談してください。
(社)全国浄化槽団体連合会「合併処理浄化槽と上手につきあう方法」より引用
横向流夾雑物除去槽の整流板が汚泥やスカム等で変形・破損することは?
整流板はあえて外槽と固定をせずに、しなやかな素材で力を逃すことで破損しにくい構造となっています。
<整流板の変形事例>
清掃時や水張り時に整流板が破損することは?
下図のように整流板下部と外槽の間には隙間を設けて全室で連通させていますので、清掃時や水張り時に破損しにくい構造となっていますが、吐き戻しやポンプによる中排水には注意してください。
<横向流夾雑物除去槽の下部>
臭気対策は?
臭気の発生箇所として横向流夾雑物除去槽、接触ろ床槽が考えられます。特に、横向流夾雑物除去槽は性能を発揮するまでにある程度の日数を要します。この時期に臭気が発生する場合があります。また接触ろ床槽からの臭気については、負荷が高く空気不足や生物処理が不十分である場合に発生することが多いです。
下記の対策をお試しください。
<対策>
・屋内まで臭気が逆流している場合は、配管経路のトラップ不良が考えられます。トラップの点検を行ってください。
・接触ろ床槽の処理不良の場合は「Q5」の運転方法をお試しください。
・応急処置として、マンホールにパッキンを貼ることで、臭気漏れを抑えることもできます。
散気用、ろ材洗浄用バルブの設定(開閉)の見分け方は?
下表を参考にバルブの設定を行ってください。ただし、5、7人槽の散気用バルブは製造工場によって使用(形状)が2種類ありますのでご注意ください。
水質不良施設においての維持管理のポイントは?
水質不良の原因の一つとして、ろ材に付着した生物膜が増加しすぎてろ材が閉塞することがあります。接触ろ床槽のD0が1mg/L未満、もしくはろ材に多量の生物膜が付着して処理水質が思わしくない場合、ろ材下部からばっ気を行うことで改善が期待できます。
<手順(5,7人槽)>
(1)洗浄管(可動)のユニオンを緩め、操作部を放流側から反時計回りに45°回転させ、ユニオンを締める
(2)ろ材洗浄用バルブ(赤)のレバーを【下向き】
(3)散気用バルブ(青)を【閉】
(4)循環水移送用バルブ(灰)を操作して循環水量を調整する
<手順(10人槽)>
(1)洗浄管をアームから外さずに初期位置(頂部のエルボが放流側に向く位置)にあることを確認する
(2)ろ材洗浄用バルブ(赤)を【開】
(3)散気用バルブ(青)を【閉】
(4)循環水移送用バルブ(灰)を操作して循環水量を調整する
※上記の方法で改善できない程負荷が高い場合は、ブロワの増設やランクアップを検討ください。
洗浄管の洗浄方法は?
5,7人槽については洗浄槽を取り外すことはできませんので、配管に水道ホースを接続して洗浄してください。また、10人槽は洗浄管を取り外して洗浄することができます。
<洗浄管の取り外しおよび洗浄方法・・・5,7人槽>
<洗浄管の取り外しおよび洗浄方法・・・10人槽>
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